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ニッカー絵具

AMBASSADOR
ARTIST

ジョン・スティーブンス
John Stevens
レターアーティスト/カリグラファー/
タイポグラファー/デザイナー
■経歴
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 出身。
これまでロイヤルメール(イギリス)の郵便切手、書籍の表紙、雑誌や新聞の差し込み見出し、博物館や図書館、教会などのポスターやサインなど、多岐にわたって手掛ける。
クライアントには、ロイヤルメール(イギリス)、タイムマガジン、ニューヨーク公立図書館、ルーカスフィルムなどが含まれる。
オリジナル作品は、サンフランシスコ公立図書館、レターフォーム・アーカイブ(アメリカ)、ベルリン芸術アカデミー、クリングスポル博物館(ドイツ)、ラ・カーサ・デ・リブロ(プエルトリコ)などに所蔵されており、個人蔵のコレクションも多数。
また作品は、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパやアジア諸国の出版物に多数掲載されている。
国内外のカリグラフィーのセミナーや講演会で後進を指導。招聘されて来日したこともある。
■著書
「SCRIBE––ARTIST OF THE WRITTEN WORD」。
「Mastering Broad Brush Roman Capitals」は2020年 刊行予定。
十代の頃に独学でギターを覚えた経験が、
その後のレターアーティストを目指す上で
大いに役立った。
この度は、ニッカーの製品ペインターズガッシュのために、オリジナルのロゴの作成、及びパッケージのデザインを制作・監修してくださり、ありがとうございました。
日本でもカリグラフィーに携わる人々には、ジョンさんやジョンさんの作品を知らない人はいないというほど有名です。
2017年に日本のテレビ番組「和風総本家 〜世界で見つけた Made in Japan〜」に出演してニッカーを紹介してくださいました。
その際、デモンストレーションされるVTRを拝見し、見事な筆さばきに惚れ惚れしました。
そのような技術はいつ、どのようにして習得されたのでしょうか?

若い頃、私はふたつのことに興味を持っていました。美術と音楽です。子供の頃はよく百科事典に載っているイラストを模写したりしていました。
13歳の夏休み、ある友達がギターを貸してくれたので、私は朝から晩まで独学で練習しました。それまでギターを弾いたことはなかったのですけれど、9月に学校が始まる頃にはかなり上手に弾けるようになっていて、その頃からミュージシャンになることを夢見るようになりました。私は、ラジオやレコードを聴いて覚えるのが得意でした。「play by ear」とよく言われる能力なのですが、耳で音を正しく聞き取って、その通りに弾くことができました。後に楽譜の読み方を独学しましたけれどね。
私はいくつかのバンドで演奏するようになりましたが、美術の方は個人的に続けていました。

それはすごいですね!興味を持たれたことを、熱心に追求されるんですね。

ええ、自分の好きなことはね!
それから20代になって、父から看板店を営む父の友人を紹介され、私はその人に弟子入りしました。後になって、私は自分がとてもラッキーだったということに気がつきました。彼は非常に才能があり、知識豊かなサインペインターだったのです。こうして私は数年間、サインペインターとして生計を立てていました。
私は一生懸命働きましたし、その人から主にプロの技術や方法などたくさんのことを教わりました。
そして、タイポグラフィを掘り下げていくうちに、多くの偉大なタイプデザイナー達が、実はカリグラファー(書道家)でもあるということに気づいたのです。
そこで私は、カリグラフィックな文字の形やレターフォームの理論などを勉強したのですけれど、これらは本から学んで、ほぼ独学でした。ギターを独習した経験が、この時大いに役に立ちました。ニューヨーク公立図書館に足繁く通っては、文字に関する稀覯本をたくさん借りて、隅々にまで目を通して徹底的に勉強しました。単発の授業を受けることもありましたけれど、自分の都合に合わせて一人で充分勉強できることが分かりましたし、その時はまだサインペインターとして働いていましたからね。私はとことん追求し、貪るように書物を読み、そして練習しました。周囲の人は、気がふれたかと思ったようです。

デザイン理論も勉強しました。音楽が私に美術やデザインの抽象的な側面について多々教えてくれたと思います。とにかく、魅かれたのですね、すぐに理解して身につきました。
その後、私はサインペインターとして働くことを辞めて、グラフィックデザインや文字を書く仕事、これは、カスタムのタイプフェイスを手書きで制作していく仕事やカリグラフィーの仕事も含みますが、そういった仕事を始めました。

最初のご質問に戻ります。サインペインティングもカリグラフィーもともに、技術を要しますし、道具を使いこなすことが求められます。道具の中でも特に、筆を上手に操れることです。これは、日本の多くの皆さんはご存知のことですけれど。筆で書く/描くことをマスターするには、練習に時間をかけること、そして使用する筆の性質を理解するよう、鋭い洞察力を持って注意深く観る必要もあります。私はあらゆる種類の筆を試し、仕事にも使ってきました。文字を書くのか、塗りながら文字を形成していくのか、あるいは線を引いて形成していくのか。それぞれ異なる技能を要しますし、適した筆も異なります。さらに、違う絵具を使ったり、異なる表面に書いたりすれば、筆は違った動きをします。ですから、取り組んでいるものに応じて、それぞれの道具をコントロールできるようにならなければいけません。

長いこと探し続けたのち、
幸いなことにニッカー絵具に
出会った。
ニッカーの絵具を使用し始めた理由は、以前使用されていた絵具が生産中止になったためだそうですね。
そして、いくつか代わりの絵具を試している中で、ニッカー製品に出会ったとのこと。以来気に入って、ご愛用いただいているとのことですが、具体的にどういった点がニッカーを選ぶ理由なのでしょうか?

そうなんです、おっしゃった通りで、長いこと探し続けたのち、幸いなことにニッカー絵具に出会ったのです。
高品質の製品は、職人やアーティストにとって、なくてはならないものであり、いつも使う喜びを感じるものです。
まず初めにポスターカラーの黒を使いました。「しっかりとした力強い黒い色で、細い線もきちんとコントロールして書くことができ、伸びが良い」というのが、私が良い製品(絵具)かどうかを評価する基準なのですが、(ポスターカラー40mlは)伸びが良く、発色もとても良く、分量も十分です。それから、乾くと完全にマットになります。
また、混色が容易で、特定の色が必要な場合に、その色を正確に作り出すことができるのです。ある時、ポスターカラーの3原色を、パレットで大まかに混ぜて使ってみたことがあるのですが、素敵な色を簡単に作り出すことができたんですよ。

ポスターカラーは初心者にもいいですね。扱いやすいですし、通常のガッシュよりも柔らかいので、筆でカリグラフィーをするのには、コントロールしやすいです。ですから、私が教える筆のカリグラフィーのセミナーでは、使いやすさ、それから不透明で伸びが良いという点から、生徒は皆ガッシュではなくポスターカラーで練習をしています。
後に、ようやく見つけたこの絵具を米国のサプライヤーに紹介しました。今では、そのジョン・ニール・ブックセラーとニッカーとの結びつきにより、他のアメリカのカリグラファーたちもこの絵具を入手することができるようになりました。

左:ニッカー 右:現地ブランド
発色と伸びの良さが確認できる
三原色を使った作品
(マゼンタ・セルリアンブルー・
レモンイエロー)
ジョンさんの技術で特に驚くのが、重なっているストロークにぶれが全くなくぴたりと重なっていること、そしてそのように重なる部分やストロークが交差する部分が滲まずとても綺麗だということです。
お使いのポスターカラーやデザイナースカラーはアラビアガムがバインダーの水溶性の絵具です。
下の色が滲まないように書くコツはありますか?
また、平筆で書くカリグラフィーの良い練習方法などがあればあわせて教えて下さい。

これはどの絵具についても言えることですが、絵具を溶く際の適正な水分量を見い出し、いつもその加減を一定に保つ必要があります。ニッカーのポスターカラーは、柔らかくてコントロールしやすいですから、1ストローク書くごとに1秒待って落ち着かせてから、次のストロークを書きます。急がないこと、それも秘訣ですね。
ところで、ストロークが重なった部分の色も、悪くないでしょう?
平筆でローマンキャピタルを書く時は、ストロークが重なり合うのですが、それが正確に重なっていないといけないのです。そのため私は、生徒にストロークがどのように重なり合うのかを、きちんと見せて示さないといけません。
今、私は平筆で書くローマンキャピタルの本の出版準備中なのですが、この本では、それぞれのストロークやその重なり具合を分かりやすくするために、各アルファベットのストロークを、5色のポスターカラーと5本の筆を使って書き分けました。この出来栄えには満足しています。
アドバイスについて、ですが。(まあ、そのために本を執筆しているんですけれどね。)一口に言うと、良いお手本をそばに置いて、キーとなる文字に注目することです。どれがキーとなる文字か?それは書体にもよりますが、一般的には、IとOがその書体の縦の線とカーブの基準となります。そしてイタリック体では、次の文字への繋がり方にも注目します。完璧を求めるのではなく、リズムにより注意しましょう。それから、紙面の余白にも気を配ることです。(紙の全面に書き散らしたりしないようにします。)

〇の重なった箇所が滲まず
綺麗に仕上がっている。
最後に何かメッセージがあればお願いします。

何もかもがデジタルというこの時代にあって、アーティストのための高品質の画材は、とても重要なものです。
ニッカーが優れた製品を作ることに関心を持たれ、私のようなカリグラファーが言わんとすることにも耳を傾けてくださることを、とても嬉しく思っています。職人さんの熟練された技がアーティストをサポートしてくれている、私はそのことにとても感謝しています。今後も引き続きニッカーとさらなる関係を築いていくことは楽しみです。ニッカーのご成功、そして今後も高品質の製品を作り続けていかれることを願っています。

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